民法改正により「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ。その違いは?

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2019年09月17日

民法改正により「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ。その違いは?

2020年4月1日、新民法が施工され、これまで不動産取引においてもこれまでの「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」によって売主は責任負うこととなります。では「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」の違いを説明したいと思います。

「瑕疵担保責任」とは何?

そもそも瑕疵担保責任で何?って思われる方も多いと思います。まず「瑕疵」という言葉ですが読み方が分からないという人も多いと思いますが「かし」と呼びます。もっと簡単にいうと傷・欠陥というような意味になります。瑕疵そのものは大きく分けると4つあります。
 

①物理的瑕疵・・・建物の雨漏り、シロアリ、耐震強度不足、家の傾きなど

②法律的瑕疵・・・法令等の制限によって取引物件が自由に使用できないなど

③心理的瑕疵・・・殺人、自殺、火災など一般的にいう「事故物件」 

④環境的瑕疵・・・近隣からの騒音・振動、異臭、日照障害、近隣に暴力団事務所などの反社会的組織事務所があり快適な生活阻害されるような場合
 

以上のようなことが、取引前に分かっている場合は売主は買主に対して告知する必要があります。売主は売却にあたって不利になるようなことは隠さず買主に引き渡してくださいっていうことです。もし売主が瑕疵を知っていたにも関わらず告知せずに引渡しをした場合、後に買主から損害賠償の請求契約解除ということもあり得ります。
 

しかし、売主が全く瑕疵の事実を知らないまま買主へ引渡した後、買主が瑕疵を発見すると言ったケースもあります。これを「隠れたる瑕疵」と言います。その場合は瑕疵を発見してから1年以内に売主へ告知することで売主がその瑕疵を補修する義務を負います。これを「瑕疵担保責任」といい、不動産取引では瑕疵担保期間をある程度決めていることが多く、売主が個人の場合は引渡後3ヶ月、宅建業者が売主の場合は引渡後2年となっています。期間については特約で変更は可能ですが買主に不利になりような特約はつけれないものとしています。

「契約不適合責任」とは何?

次に契約不適合責任についてですが、民法改正後は売主は現在の瑕疵担保責任ではなく、契約不適合責任を負うことなります。契約不適合責任は契約書に書かれている内容が一致しているかどうかのみの判断となるので、買主が瑕疵を発見したかどうかは関係ありません。例えば雨漏りについて契約書に「雨漏りしています」という内容が書かれていれば売主は責任は負いませんが書かれていなければ買主は売主に補修請求ができます。つまり契約書に書かれていない不具合が出た場合、買主は売主に補修の請求ができることとなります。契約不適合責任においては売主側の負担はこれまでよりも大きくなってくるのではないかと思っています。

契約不適合責任では買主の請求できる権利が増えます

現在の瑕疵担保責任において、買主が売主に対して行える請求権が「損害賠償」「契約解除」の2つですが、契約不適合責任においては先の2つに加え「追完請求」「代金減額請求」も請求できるようになります。
 

「追完請求」・・・簡単にいうと「直して下さい」と言える権利です。どういうことかと言いますと、上記の雨漏りを例にあげると現行の瑕疵担保責任では売主が契約時に雨漏りはないとしたうえで、契約し引渡後、雨漏りが発生した場合は売主に補修の請求は出来ません。つまり買主自身で加入している保険などで直すこととなっていますが、契約不適合責任では契約書と一致していなければ売主がその雨漏りが知らなかったとしても買主から補修請求が出来るようになります。
 

「代金減額請求」・・・買主が売主に追完請求したにも関わらず売主が補修しない、あるいは補修不能となったときに代金を減額できる請求権です。売主は補修を拒み続けると次に代金減額請求を受けてしまうことになります。

付帯設備表・物件状況報告書がより重要なものとなります

売買取引の際、売主から買主へ物件状況を告知する書類として付帯設備表・物件状況報告書というものがあります。契約時に対象物件の設備の有無や使用状況などを説明する書類ですが、今後はこれらの書類がより重要なものとなると思われます。どのような書類かは下記に添付しています。
  • 付帯設備表(左)と物件状況報告書(右)

「契約不適合責任」は「瑕疵担保責任」と同様に任意規定となります

契約不適合責任は瑕疵担保責任と同様に任意規定となります。任意規定というのは原則を定めているだけであり売主、買主双方が合意すれば契約不適合責任を免除することも認められています。全てを免除することも可能ですし、瑕疵担保責任のように引渡後3ヶ月や引渡後2年間など一定の期間を決めることも認めらています。実際の取引でも契約不適合期間を定めた上で取引していくことが主となると思われます。

但し、売主が宅建業者、買主が個人の場合、売主の宅建業者は契約不適合責任から逃れることはできません。 

我々、業者もトラブルにならないよう注意していく必要があります

我々、宅建業者も今回の民法改正によりトラブルにならないよう物件の調査や書類作成にも注意していくことが必要となってくるのではと考えています。売主様、買主様双方が気持ちよく、そして満足できる取引ができるよう私自身も日々勉強し、精進してまいります。
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